最近、twitterで「宿題は効果なしで逆に悪影響」という内容の投稿を見かけました。
デューク大学のハリス・クーパー教授の論文・研究がもととなっているとされますが、どうやら誤解されているようです。
元塾講師として、「宿題は効果がある」と自信を持って言えますので、
今回は「宿題の効果」について記事を書いていきます。
ハリス・クーパー教授の論文・研究の誤解
「宿題は悪影響」と主張するひとたちが根拠としているのが、
アメリカのデューク大学のハリス・クーパー教授(心理学)の研究です。
私は大学で心理学を学んでいましたので、
研究のしっかりした情報を理解するためには、元の論文を読むことが一番と思い、探し回りました。
残念ながら論文を見つけることはできませんでしたが、
デューク大学公式サイトにて、ハリス・クーパー教授の研究に関する記述を見つけました。
その中には、
「小学生では宿題の効果は小さいが、学年が上がり高校生になると効果が大きくなる」
「宿題を多く出し過ぎることは、逆効果になる可能性がある」
と書かれていました。
つまり、低学年では宿題の効果が小さく、
宿題を多くだすことは逆効果になる可能性があるが、
「宿題に効果がない」「宿題は悪影響」と主張しているわけではないのです。
さらにクーパー教授は
「現在までの宿題に関する研究には、限界がある」
とも言っているようで、今後さらなる研究を重ねていく必要があるとしています。
以上により、
ハリス・クーパー教授の研究は、
「宿題は効果が無くて悪影響」の根拠にはなっていないことがわかります。
宿題は、出し方によって効果がかわる
私は元塾講師としての経験の中で、
宿題の出し方によって、効果が有る無しが変わっていくと考えています。
効果のある宿題の出し方の一例
人間は、短い期間に何度も同じ問題を解くと、覚えやすくなります。
(このことは、↓にて詳しく解説しています)
暗記する方法・コツを伝授!英単語などを覚える際に効率よく記憶するには?
逆に、授業中に解けるようになっても、しばらく解かないと忘れてしまいます。
そこで、宿題では、「授業で身につけた解き方を忘れないうちに、もう一度解く」ことを目的にするのです。
具体的には
①授業で学んだ重要な問題を、
②最小限の量で、
③生徒が、家で自力で解けるレベルで
宿題として出すのです。
「最小限の量」「生徒が自力で解けるレベルのもの」というのは、
生徒のモチベーションのために非常に重要なことです。
これだけで、その日に行った学習内容を覚えてもらいやすくなります。
さらに、次の授業で宿題から数問「確認テスト」として出題すると、効果は上がるでしょう。
ちなみに、私は塾講師時代に、このように「最小限の量」の宿題の出し方をしていましたので、
宿題の指示が「p72の(1)と(3)、p73の(2)と(4)」のようになっていました。
生徒から「メモをとるのが面倒くさい」と文句を言われますが、
「じゃあ、p72とp73全部にしてやろうか」と言うと、
生徒は「そっちの方が嫌」と受け入れてくれます。
効果の出ない宿題の出し方
そして、効果が出ない宿題の出し方も存在します。
それは
「とりあえず、範囲っぽいページを宿題として出す」というやり方です。
教師がそのページの問題を読んだり解いていない場合は最悪。
効果が出にくい理由として、
「量が多くなる」
「家で自力で解けない問題がふくまれている可能性がある」
「解いてもあまり意味のない問題が含まれている(時間の無駄)」
などが挙げられます。
とくに「量が多い」「自力で解けない」は、
生徒のモチベーションを大きく下げる原因となるため、
宿題をやらない、答えを写してくるなどの行動につながり、
成績を上げることが出来なくなってしまいます。
宿題は、乱暴な言葉でいえば、「生徒の時間を奪うもの」です。
効果の上がるやり方で、できるだけ最小限にしてあげるようにしましょう。
宿題によって身につく力
そして、宿題をやることで身につく力として、
①期限までに行う力をつける
②自分で勉強する習慣をつける
なども挙げられます。
とくに、「期限までに行う力」は、社会に出てからとても重要。
これができないと、まわりに大きな迷惑をかけることになります。
(〇月〇日までにやってね、ということを守れない大人って、意外と多いです)
最後に
今回は、宿題の効果について、元塾講師としての経験にまとめていきました。
「宿題に効果が無くて悪影響」という誤解をもとにした情報がSNSなどで広まっているのは、
多くの人にとって「宿題が嫌なもの」であり、できれば無くなってほしいと考えているのが理由でしょう。
しかし、実際「生徒の時間を大きく奪っているのに、効果があまりない」宿題の出し方をする教師が多いことも事実です。
そうならないように、これを読んでいる教師の皆さんは、
効果的な宿題の出し方を考えるよう、心がけてくださいね。